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2019.04.15
Rust Belt(ラストベルト)と呼ばれる工業地帯
アメリカでは、北東部にラストベルトと呼ばれる工業地帯があります。この地域ではアメリカにおける重工業と製造業が多く集積しており、工業地帯が多数存在します。当該地域に含まれるのは以下のエリアです。
インディアナ州・オハイオ州北部・ミシガン州デトロイト周辺・ウィスコンシン州ミルウォーキー周辺・イリノイ州北東部・ニューヨーク州バッファロー周辺・ペンシルバニア州など
製造拠点の南部へのシフトと北部における工業の衰退
当該地域では、ペンシルバニア州や近隣のテネシー州などで石炭が産出することから重工業が発展し、またデトロイトを中心として自動車産業などが発展していました。しかしながら、1970年代に入ってから貿易の自由化や製造業を外部委託する動きなどが加速していき、次第に工業の拠点は南部へとシフトしていきました。
ミシガン州・オハイオ州では自動車産業の従事者が2000年以降減少していったのに対し、アメリカ南部のアラバマ州では2000年以降従事者が増加しています。アラバマ州では計画的な税金優遇措置を実施して海外自動車メーカーの誘致に力を入れており、昨年1月にはトヨタとマツダが合弁組み立て工場の建設を決定し、年間4,000人の従業員を雇用すると発表しました。2021年の工場完成が予定されています。
結果的に、北部の工業地帯では産業構造そのものが変化を見せ始め、それまでの製造業や重工業などからサービス業が産業の中心となっていきました。特に、デトロイトにおける自動車産業の衰退は世に知れ渡るところとなりましたが、閉鎖する工場などが増えていき、当該地域はRust Belt(=錆びついた地帯)と呼ばれるようになりました。
トヨタ自動車の動向
安い労働力を求めて各メーカーが生産拠点を南部へと移していく中、北米トヨタはテネシー州・ミズーリ州・ケンタッキー州の既存工場拡張を先月に決定、今後5年間で最大600億ドルを投下します。
工場をメキシコへ移すことも検討されていましたが、アメリカ国内の生産拠点増強を選択した結果となりました。トランプ大統領がメキシコとの国境沿いに壁を建設することを主張しており、これが影響したとの見方もありましたが、北米トヨタのCEOは、壁の建設は今回の決定に関りがなく、長期的にビジネスを継続していく観点から今回の決定を下したと述べています。
持ち直しを見せるミシガン州
今年2月下旬にはフィアットクライスラーが45憶ドルを投下してミシガン州の工場を拡張すると発表しました。ゼネラルモーターズはデトロイト北東のフリントで3憶ドルを投下して400人の従業員を新規雇用しています。また、先月にはフォードもデトロイトの南西にあるフラットロックで8億5,000万ドル以上を投下して900人の従業員を追加雇用する計画を発表しました。
ミシガン州では、このように各自動車メーカーが製造拠点及び雇用の拡大を表明しており、1990年~2010年の間に自動車産業の従事者を約3分の1程度まで減らしましたが、2010年以降は従事者が再び増加しており、一定の持ち直しを見せています。
アメリカでは、SUV車及びピックアップトラックに対する強い需要に支えられて自動車産業の景況は堅調に推移し始めていますが、アメリカと各国との貿易協議の行方によっては強い影響を受けるものと見られており、今後の行方に注目が集まります。