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2019.03.18
中国が経済成長率の目標を引き下げ
中国では、今月初頭、国会に当たる第13期全国人民代表大会会議が開始されました。李克強首相は、政府活動報告にて2019年の経済成長率を6.0~6.5%に設定すると表明しました。これは、2018年の経済成長率がこれまでよりも下がった(6.6%)ことを受けてのものです。なお、中国における目標経済成長率の引き下げは2年ぶりとなります。
李首相は経済成長目標を引き下げる一方で景気対策にも言及しており、特に景況感が悪化している製造業と中小企業の税負担を軽減するため、大規模な減税を実施すると表明しました。
中国の輸出額が減少
アメリカの経済紙ウォールストリートジャーナルによると、今年2月の中国の輸出額(ドル建)は前年同月比で20.7%減少したとのことです。中国では、毎年1月~3月に旧正月があるため(2019年は2月5日~10日前後が該当)、この時期の各経済指標は下がりがちですが、1月と2月とを合わせた数字で見ても、輸出額は前年同期比で4.6%のマイナスとなっています。中国の輸出先は、輸出額全体の約20%をアメリカが占めており、次いでEUが約15%を占めています。2019年1~2月の中国によるアメリカ向けの輸出額は、貿易摩擦の影響を受けて前年同期比で9.9%のマイナスとなりました。
中国の輸出品目は、機械・輸送機器が全体の40%~50%と半分前後を占めています。これは、部品・素材を安く輸入してから安い賃金・コストで組み立てた後に完成品を輸出するというモデルで輸出額を伸ばしてきたものですが、人件費の上昇と人民元高によって全体的なコストが増加しており、近年では製造業者の利益を圧迫しています。この変化を受けて、中国の製造業界ではベトナムなどへ製造工場を移す企業が増えています。
中国国内におけるインフラ投資が減速
上記の変化を受けて、特に中国国内における2018年のインフラ投資額は前年比3.8%プラスとなったものの、2017年度は前年比19.0%プラスであったことを鑑みると大幅に減速しています。実際、中国国内の工業設備稼働率は76%となっており、設備稼働率の低下がインフラ投資の減速を裏付けています。
また、インフラ投資を含む固定資産投資に目を向けると、2018年は前年比で5.9%増えていますが、2017年の対前年比7.2%と比較するとこちらも減速している様子がうかがえます。これらのデータから、経済成長率の鈍化と貿易摩擦の影響は少しずつ広がってきていることが伺えます。
中国の不動産市況について
中国当局の不動産統計によると、中国国内の不動産投資増加率(11.6%)と販売増加率(3.2%)とに乖離が出始めていて、同時に住宅在庫は2年ぶりに増加しているとのことです。これらのデータから、2016年以降の建設着工数増加に大きく貢献してきた住宅在庫の減少傾向が終わりへと近づいていることが伺えます。
中国では2014年にも住宅の在庫数が過剰となり、その結果、2015年には住宅市場が低迷しました。現在の在庫数は当時の水準より低いものの、経済成長の減速やインフラ投資の減速など、当時よりもネガティブな要素は多くなっています。
これまでに見られた中国市場の過熱は収まりつつあり、中国政府は既に様々な景気対策に乗り出していますが、このまま2019年下半期に入っても輸出が伸び悩んで投資が全般的に低迷したままであった場合、他国経済へも大きな影響が出ることが予測されています。