お問い合わせはこちら
2018.01.18
米大手住宅情報サイトZillowのチーフエコノミストが、2018年のアメリカの住宅市場で予想される6つの項目をテーマにレポートをリリースしました。Zillowは2010年に設立されたアメリカ(シアトルが本社)の会社ですが、全米各地の物件情報に関して大量のデータを保有しており、市場のリサーチのクオリティも高い事で有名です。
Zillowの2018年の予測を理解する上で、世代を表すいくつかのキーワードを知っておく必要があるので、まずはそれらについて触れておきます。
ベビーブーマー、ジェネレーションX、そしてミレニアル世代へ
不動産に限らずどのようなアメリカの市場調査レポートを見ても、ベビーブーマー、ジェネレーションX、ミレニアルなどの世代を表すワードがよく使用されます。
まずは、全米で多くの割合を占めるベビーブーマー(1946~1964年生まれ)と呼ばれる世代です。彼らは第二次世界大戦後のベビーブーム時代に生まれ、今の米国を形成する経済や文化の担い手であり、米国の消費をけん引しています。
ベビーブーマーの後に登場したのが、ジェネレーションX(1965~1980年生まれ)と呼ばれる世代です。TV等のメディアからの情報量が増加した時代の影響を受けています。彼らは核家族化が進んだ世の中に生まれ、家族やパートナーに対して、ベビーブーマーよりも執着心が無いと言われています。社会人になってから、好景気と不景気の両方を経験しています。
そして、ジェネレーションXの後に生まれたのが、ミレニアル世代(1981~2000年生まれ)です。ジェネレーションYとも呼ばれているこの世代は、アメリカの総人口のうち4分の1を占める最大の人口群として注目されています。
なぜミレニアル世代は注目を集めるのか?
多くの企業が、ミレニアル世代の消費性向を知ろうと躍起になっています。ミレニアル世代の特徴は、前世代との価値観の違いです。ベビーブーマーとジェネレーションXの多くは「購入による所有」に一定の価値を見出すのに対し、ミレニアル世代は所有そのものにあまり価値を見出さないとされています。前世代とは好むブランド、車・家も異なり、恋愛や結婚に対する考えも異なることで知られています。
リーマン・ショック以降、景気が低迷する中で、ミレニアル世代以降の多くのアメリカの学生は4万ドル以上の学資ローン(スチューデントローン)を抱えて卒業しています。ローン返済等の経済的な背景もあり、ミレニアル世代の結婚は遅く、はじめてのマイホーム購入やマイカーの購入のタイミングも前世代とは異なります。
ミレニアル世代の後にジェネレーションZ世代が続きますが、今後数年の米国の消費者市場を考察するにはミレニアル世代にフォーカスする必要があります。これらを踏まえ、米大手住宅情報サイトZillowの予測する2018年のアメリカの住宅市場を見ていきます。
【2018年の予測】
1) Inventory shortages will drive the housing market:
●住宅の供給不足が大きな影響を及ぼす
住宅市場の供給不足は、2018年も引き続き大きな問題になりそうです。アメリカ全体では、1年前とくらべ約12%も住宅在庫が減少しました。さらに、現在マーケットで販売されている物件の半数以上は平均よりの価格の高い高級住宅であるというデータもあり、こうした価格帯の住宅は、はじめて自宅を購入するfirst-time home buyersには手の届かない物件です。
この傾向は、はじめて自宅を購入するミレニアル世代にとって、住宅購入の妨げになるとされています。ミレニアル世代より上のベビーブーマーやジェネレーションX世帯は既に持っている家を売却し、そこから得た利益を次の物件の購入資金として活用するなどの方法がありますが、そうした手段が無いミレニアル世代にとって、自分たちの手の届く価格で良い物件を探すことは、ますます難しくなっていきそうです。
2) Builders will turn their focus to entry-level homes:
●各住宅メーカーは、はじめて自宅を購入する層に向けた商品供給に動き出す
これまで収益性を優先し、比較的高級な住宅を供給してきた住宅メーカーは、今後ミレニアル世代を中心としたfirst-time home buyersの住宅購入ニーズを受け、より安価な価格帯の住宅開発を増やしていく動きが高まるのではないかと予想されています。リーズナブルな物件を探し求める層が増えるにつれ、住宅メーカーはこの需要を無視できなくなるという事です。
3) Millennials will move to the suburbs:
●ミレニアル世代は、都市から郊外へ移り住む
住宅メーカー各社が、はじめて自宅を購入する人々でも手が届く価格帯の住宅を開発する際、ビジネスの中心地のある都市エリアは既に土地が高騰しているため、郊外での住宅開発をしていくだろうと予測されています。その結果、郊外で開発された住宅を購入する多くのミレニアル世代は都会を離れ、引っ越しを余儀なくされます。ミレニアル世代は通勤が楽なビジネスの中心エリアに好んで住み、車も所有しない傾向にありますが、はじめての自宅の購入を機に郊外へ移り住み、車も購入してマイカー通勤をする人々が増えるかもしれません。
以上、今回は6つある中の3つの項目をご紹介しました。次回はその他3つをお伝えしていきます。
記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)