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海外不動産投資コンサルティング

MARKET UPDATE

Japanese Outbound Real Estate Investment Rises 23%
日本の海外不動産投資「アウトバウンド」が23%増加

日本

2017.12.14

日本の海外不動産投資が対前年で23%増加

不動産大手のCBREによると、2017年上期(1月~6月)の日本の投資家による「アウトバウンド」の不動産投資額は13億ドルと、前年同期比23%増になったという事です。

(海外の投資家が日本に投資する動きを「インバウンド」と呼ぶのに対し、日本企業や日本の投資家が海外に投資する事を「アウトバウンド」と呼びます。)

この「アウトバウンド」投資の資金の流入先は、CBREのレポート内の ”Outbound real estate investment (direct investment in existing properties) by Japanese investors in H1 2017 (Jan.–Jun.) stood at US$ 1.3 billion, up 23% y-o-y. By region, almost all investment occurred in the Americas, and by asset type, 88% of investments were in office buildings.” という記載どおり、ほとんどがアメリカ不動産です。アセットのタイプはオフィスが最も多く、88%を占めたという事です。

各社の具体的な海外投資事例

各社の具体的な動きをみていくと、今年は日本企業の米国のオフィスへの投資が活発に行われたことがわかります。例えば今年9月に三井不動産株式会社がマンハッタン最大級のオフィスプロジェクトである「(仮称)50ハドソンヤード」の参画を発表した際は、国内外で大きな話題となりました。(※三井不動産が事業シェアの9割を保有。マンハッタンにおいて過去最大の複合開発「ハドソンヤード」におけるオフィスビル開発事業。延床面積約260,000平米とマンハッタンにおいても単体オフィスビルとして最大級。事業費用総額4,000億円超。)

また、既存のオフィス物件の取得に関しては、今年6月にはNTT都市開発株式会社がボストンでのオフィスのビル取得を発表しました。(※高級リテールが立ち並ぶBack Bayエリアに所在し、地下鉄2路線及びアムトラックの停車駅至近のエリアに、地上11階・地下2階のオフィスビルを取得・保有。)

さらに、8月には三菱地所株式会社がワシントンDCでの大規模オフィスビル開発「Boro Tower」の参画を発表しました。

(※The Meridian Groupとの共同事業。交通の利便性にすぐれたワシントンDC近郊のタイソンズで地上20階建てのオフィスビル開発を計画。)

間接投資も今後増加する見通し

また、CBREの推計では、ファンドへのエクイティ出資などを通じた間接投資による「アウトバウンド」不動産投資額は、今後数年の間に153億ドルにまで拡大する可能性があるという事です。日本の商社・不動産会社が主にアメリカを対象にした不動産ファンドの組成を加速させています。

2月には三井物産株式会社が米国大手不動産アセットマネジメント会社への出資を発表しました。米国大手不動産アセットマネジメント会社CIM Group, LLC社と、CIM社の持分取得並びに、CIM社運用ファンドへの出資に関わる戦略的パートナーシップについて合意を締結しています。また、住友商事株式会社は、米国不動産を投資対象とした私募ファンドの組成をしました。米国不動産を投資対象とした国内機関投資家向け私募ファンド「USプライムオフィス(USPO)ファンドⅠ」(資産規模:約350億円)を2017年6月に組成し、運用を開始しています。上記のような海外不動産ファンドは、日本の低金利で運用難に直面している機関投資家の受け皿ともなることも予想されています。

日本国内の不動産の収益性が低迷

冒頭と同じくCBREの調査によると、東京・大手町のオフィスビルの想定利回りは今年7月時点で3.55%まで低下しており、2003年の調査開始以来の最低水準にあるという事です。不動産投資信託(REIT)の運用会社も国内の案件では十分な利益の確保が難しくなっています。日本国内の住宅市場においても、2015年の相続税を主なきっかけに全国に広まったアパートローンに対して金融庁の監視が強化され、4~6月の金融機関による新規貸出額も前年同期比15%減となりました。

このような背景から、来年も引き続き「アウトバウンド」の投資規模が拡大していくと考えられています。日本国内では吸収しきれなくなった投資マネーの行先として、海外不動産投資が今後どの程度の規模で加速するのかが注目されています。

記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)