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2017.10.12
約25年ぶりに商業用不動産開発が活況
2017年8月29日のThe Wall Street Journalによると、ニューヨークのマンハッタンでは、オフィスなどのいわゆる商業用不動産開発が25年ぶりの活況を見せています。日系デベロッパーもその一部を担っています。たとえば東急不動産は、最高級オフィス地区として知られるパーク・アベニューで、オフィスビルの再開発事業に参画しています。また、三井不動産は近年開発が進んでいるマンハッタン西側のハドソン・ヤード地区で、合計約11haもの巨大開発に参画しています。
マンハッタンの既存のオフィスビルの老朽化
ニューヨークにある既存のオフィスビルは、世界中の大都市と比べても築年数が経過しています。例えばパーク・アベニューに並ぶ既存のオフィスビルの多くは1950~60年代に建てられたものです。オフィスビルの象徴であるロックフェラー・センターに至っては、1930年代の建築です。マンハッタンのオフィス賃料は全体としては1年前からおおむね横ばいですが、古いビルに新しいテナントが入居する際のリフォーム費用がかさむため、実質の賃料は下落しています。新しいビルは設備も優れていることから、マンハッタンの西側で開発が進む新築ビルが近年人気を集めています。
オフィスの「高密度化が進む」
最近のもう一つの傾向として、金融サービス企業や法律事務所などを中心にオフィスの「高密度化」が進んでいます。オフィスの個室が狭くなったり、廃止されたりと、多くの企業はオフィス面積を従業員1人当たり175平方フィート以下で考えているようです。
マンハッタンに特化した大手不動産投資信託
マンハッタンの商業用不動産市場のトレンドを知る上で、大手不動産投資信託の2社であるボルネード・リアルティ・トラスト(VNO)とSLグリーン・リアルティ(SLG)の動向を分析するという方法があります。この2社はマンハッタンに特化した経営をしています。
ボルネード社の株価は今年の初めから12%下落、SLグリーン社は約10%下落していますが、両社のREITの利益指標であるFFO(ファンズ・フロム・オペレーション)は、2018年に1桁半ばの成長が見込まれるため、現在の株価には割安感があるそうです。
ボルネード社の時価総額は140億ドル、ニューヨーク資産の純営業収益は過去10年で2倍に増加し、業界でも上位の業績を上げています。
SLグリーン社はニューヨークにあるオフィスの最大の保有会社です。積極的な売買を行うことで知られており、マンハッタンの119棟のオフィスビルに持ち分があります。最近では、新規の賃借契約時に賃料をこれまでより約15%引き上げることで、恩恵を受けています。
ミッドタウンエリアにも活況の兆し
SLグリーン社が手掛ける注目プロジェクトの一つに、グランド・セントラル駅の向かい側で進められているワン・バンダービルドという高層ビルプロジェクトがあります。2020年完成予定で、総額30億ドルという大型プロジェクトですが、1平方フィート当たり135~155ドルという高い賃料設定でテナントが集まるのかが懸念されています。NYの西側に新規開発が集まる中で、同ビルはミッドタウン地区のアイコンとなりそうです。
ボルネード社のロス氏は先月行われた第2四半期決算発表の際に、「ニューヨークのオフィス需要は業界を問わず堅調である」と述べました。また同社の保有する5番街とタイムズスクエアの店舗のうち、5年以内に賃借契約が満了するのは1社だけだと強調しました。2018年以降続々と完成する複数の大型新規オフィスビルが市場全体にどのような影響を及ぼすのか、マンハッタンの今後のオフィス・マーケットが注目されています。
記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)