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2015.12.18
2015年12月10日のThe Wall Street Journalによると、裕福な中国人投資家が、最近ニューヨーク州のウエストチェスター郡の高級物件(コンドミニアム)に約12億の投資をしたということです。驚くべきことに、10億円を超える投資にもかかわらず、投資家グループのうち実際に現地に物件を見に行った人は一人もいなかったそうです!
「ウエストチェスター」とは?
ウエストチェスターは、ニューヨーク州の郊外の郡として知られ、世帯所得の高いファミリー層が多く暮らしています。例えば「マンハッタンのおしゃれなコンドミニアムに住む」というのが独身者の憧れだとしたら、「ウエストチェスターのー戸建てに住む」というのがファミリーの憧れとも言われています。
マンハッタンのグランドセントラル駅からウエストチェスターの各エリアへは電車で約40分~1時間程度と、通勤にも便利で治安が良いため、日本人を含む駐在員のファミリーからも人気が高いのが特徴です。
「中国人富裕層の投資目的」とは?
中国人富裕層がこのウエストチェスターに投資をした大きな目的のひとつが、「中国の資産をアメリカの不動産に組み替える」というものです。中国では今年8月に人民元の切り下げがあり、株式相場が急激に下がりました。これにより中国の富裕層の間では、「中国政府が今後さらに通貨安を推進し、我々の富を奪うのではないか」という危機感が大きくなったと各メディアでは報じられています。
「住宅よりも商業不動産にマネーが流れている」
それ以前も中国人富裕層による米国不動産投資は活発に行われてきましたが、今年の8月以降は、中国政府になるべく気づかれないように資産を国外に移す動きが更に活発化しています。また、戸建てや区分所有よりも集合住宅、もしくはホテル、オフィス、小規模のショッピングモールなどのいわゆる商業不動産に資金を投じるケースが目立ってきているようです。
記憶に新しい商業不動産取引の事例でいえば、2014年にはニューヨークのみならず世界を代表する高級ホテル「ウォルドルフ・アストリア」を、中国のアンバン保険(安邦保険集団)が19億5,000万ドル(約2,100億円)で買収しニュースとなりました。この買収の後、ウォルドルフ・アストリアによく宿泊していたオバマ大統領を含めるアメリカの要人は、盗聴などの可能性を警戒し今後の利用をやめることを発表しました。
中国人富裕層による商業用不動産購入の動きはニューヨークに限らず、アメリカの各都市に徐々に広がっているようです。彼らはオフィスビル、ホテルチェーンなどに目をつけ、投資機会を探しています。
米連邦準備制度理事会(FRB)が12月16日に9年半ぶりの利上げを決めたことを受け、米国不動産市場にも緩やかですが利上げの影響が及ぶと予想されていますが、自国の政策を警戒して資産を分散する中国人富裕層の動きは今後も続きそうです。
☆Today's English Word!
【商業不動産】commercial property
住宅用の土地や建物は「residential property」といいますが、商業不動産はそれに対して「commercial property」と表現します。
written by Yoshiko Miyake