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2020.01.22
クリスマス休暇も終わり今週あたりからクリスマスツリーの廃棄回収も始まり、街角にはクリスマスツリーの残骸が山積みになっている風景に新しい一年が始まった事を感じる。とは言っても、日本とは違い厳かな新年、心機一転新しいスタートという雰囲気よりも、クリスマス期間中の飲み疲れ・遊び疲れを癒しながら、スローなスタートが英国ならではである。今回は新年という事もあり、一連のブレグジット国民投票後のマーケットと今後の展望についてお話したい。
総選挙の結果と不動産セクターの反応
クリスマス前には、総選挙も終わり保守党が予想よりも大差で圧勝の過半数を獲得した。これまでの保守党政権は過半数を保持しない連立政権であったため、国会ではブレグジットの話合いが一年以上に渡り平行線をたどっていたが、これにより一歩前進する事ができた。この事は英国の不動産業界にも朗報として捉えられており、3年間続いた買い控えが解消される兆しが見えてきたようだ。英ファイナンシャルタイムズ紙は12月29日にロンドン都心部の超高級エリア・メイフェアの物件価格下落率が4年振りに縮小したと報道した。都心部の超高級物件は、ロンドン全体の先行指標とも言え、マーケットが下落する際は最初に下落しはじめ、高騰する際は一番先に上がりはじめると言われている。不動産大手ナイトフランク社の調査によると、2019年都心部のレジデンシャル不動産価格は、物件価格£1m以下の下落率が-3.1%だったのに対して£2-10m の物件は-2.2%--2.8%と低価格帯の物件より超高級物件の方が下げ幅を落としている事がわかる。これはまさしくマーケットが反対方向に好転してきた兆しと捉える事ができるのではないか?
左派ジェラミー・コーベンの敗北
もう一点、選挙に関して付け加えると、今回の選挙で左翼的なアジェンダを掲げてきた労働党の党首ジェラミー・コーベンが敗北し退く事になった事は富裕層に取っては不安が一つ解消されたとも報道されている。コーベン氏は今までも一貫して、富裕層を狙い撃ちにした増税を提案しており、ここ最近の労働党党首の中では一番左よりの人間である。
選挙の結果を踏まえ、FTSEに上場している不動産セクターの株価は軒並み高騰し、関連指標は年末に2019年で一番の高水準となった。
ブレグジット国民投票以後の不動産価格水準と値動き
ブレグジットの国民投票(2016年6月)から3年半が経過したが、その間の値動きをみていきたい。英国登記局Land Registryの指標によるとロンドン全域では2017年7月につけた最高平均価格£488,527から二年間ほぼ横ばいの動きを見せており、現在は3.4%低い£472,232で推移している。イングランド全域では、ブレグジットの影響を殆ど受けておらず直近2019年9月が今までの最高水準となっている(登記局発表は2-3か月タイムラグがある)。英国全土の実需需要に関して言えば、住宅供給不足が引き続き顕著である事がわかる。ロンドン都心部に関していえば、Westminster区は2018年2月につけた最高値から-14%、Kensington&Chelsea区は-18%平均価格を下げている。両区が主要2区と言われている最も高額物件の取引が多い区ではあるが、取引件数はそれぞれ月間で143件/119件と非常に少ないため、価格のボラティリティが大きい£5m以上の物件の取引価格に大きく左右され、データが歩調される傾向にある。一般の投資家が多く購入される1億~2億円前後の物件は、ここまでは大きく値動きをしていないと肌感覚では感じるが、ブレグジット国民投票の前のような勢いはないように思う。
チープマネーが売り急ぎを抑制
世界的に金利が低くローン利息の支払いが圧迫されず賃貸価格も値崩れしているわけではない事もあり、売り急ぐ家主は非常に少ないため、取引平均価格自体は2016年6月のブレグジット国民投票以後も一年半ほど値下がりをしなかった。何時も物件を売却したいオーナーはいるわけだが、それらの物件所有者が痺れを切らしてきたのを2019年中旬から少しずつ感じ始めた。国民投票以後3年間のマーケットを振り返ると、売り急がない家主・先行きを待つ買主の二つの要素が交わり、バーゲンもあまり出回らないマーケットとなっていたため、都心部の取引件数は2014年から比べると件数で半分に近い水準まで落ち込んでおり、エージェント泣かせのマーケットであった。
香港マネーの逃避
ロンドン都心の不動産は世界中で情勢不安が起きると安全資産(safe haven)として買いが集中する事で有名だ。リーマンショック後、世界中の富裕層が投資先がなく困った時には金を買うかロンドンの不動産を買え!と言われ買いが集中し、年に10%以上の伸びをみせた。その後も各国が量的緩和に走りキャッシュがだぶついた時もロンドンの不動産価格は高騰し、アラブ圏の情勢不安を巻き起こしたアラブの春の時もアラブ人の多くがロンドンの不動産を購入し価格高騰に寄与した。どこかで何かが起きるとロンドンの不動産にお金が集中する。2019年の香港で起こった情勢不安により、香港人はこぞって資産を国外に持ち出している。香港やシンガポールなどの国々は歴史的にもアメリカよりも英国との結びつきが強く、元来英国への投資は多かったが、ここへきてマーケットの回復に一役買ってくれるのではないかとの期待が強い。フィナンシャルタイムズは、このような香港人の動きを既に報道しており、海外の投資家の強いネットワークを持つエージェントも既に香港人から多くの買いが入っていると言っているようだ。今後EU離脱の内容が徐々に明確化していけば、香港人の購入に拍車がかかるのではないかと思う。アラブ、ロシア、新興国などからの投資もそうであるが、政治的干渉から逃れるための資産の逃避はあまり小さな価格変動を気にしない傾向にもあるのも現状としてはありがたい。また、そのような需要がいつでも多いロンドンは低利回りでも買い手が見つかるマーケットとなっている。
とは言えブレグジットの解決はまだまだ先。だからこそ今がチャンス?
年末の総選挙の結果を受けブレグジット問題は大きく前進し、マーケットの不安を払拭した事は間違いない。また、ブレグジットの最悪のシナリオもかなり前に出尽くしており、マーケットがその事も織り込んだ上で現在の下落幅となっている事もあり、徐々に不動産マーケットは好転していくというのが、大方の見方のようである。時間はかかるが英国政府はこれから具体的な政策を徐々に発表していける。とは言え、ブレグジットの問題は一筋縄には解決しない。各国との貿易協定だけでも決着をつけるのに何年もの歳月を要すると言われている。英不動産大手サビルズ社は2020年は英全土で1%の伸びに留まり、2021年以降3-4.5%の成長をすると予想している。もう一社大手のナイトフランク社も、ロンドン都心は今年1%程度に成長は抑えられるとしているが、来年以降上げ幅を拡大し3-5%毎年高騰していくと予想している。2020年は現在のマーケットの状態や為替水準からしても、マーケットに参入しやすい時期であると言えるのではないかと思う。
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ステイジアUK: 国嶋
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