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2017.10.27
アジアではホテル事業への投資が安定推移
CBREが発表したアジア地域のホテルマーケットのトレンドレポート”Asia Pacific Hotel Trends 2017 2Q”によると、2017年第二四半期のアジアにおけるホテル事業への総投資額は21.8億ドルと、2016年の後半から目立った増減もなく、安定した動きを見せているという事です。ベトナム、タイなどではホテル事業への投資がまだ魅力であると評価されています。
今回のレポートでは各国のホテルセクターへの投資状況のみならず、”How hotels can meet the airbnb challenge”(ホテルはAirbnbとどう競争していけばいいのか)というテーマも冒頭で取り上げられました。近年、アジア諸国でもAirbnbをはじめとする民泊サイトが急速な拡大を遂げています。
191カ国で400万件の登録掲載件数
Airbnbは2008年に本格的に市場へ参入を果たしましたが、現在Airbnbやその他のオンライン民泊サイトに掲載されている宿泊施設は191カ国で400万件に及びます。2017年の8月5日の民泊の利用者は1晩で250万人を記録しました。
CBREのレポート内では、“Airbnb has established itself as a direct competitor to low-to-mid-end hotels and serviced apartments”という記載があります。(Airbnbそのものは、低価格から中価格帯のホテルやサービスアパートメントの直接的な競合となった)という内容です。Airbnb は5つ星ホテルに宿泊する富裕層の取り込みはそれほど得意ではありませんが、2つ星や3つ星のビジネスホテルや、リーズナブルな価格設定のサービスアパートメントにとっては手ごわい競合となりました。特に長期滞在の場合、割安なAirbnbを活用する賢い旅行者や出張者が増えています。Airbnbはホストとゲストの手軽なコミュニケーションが確立されることもあり、宿泊利用のリピーターを取り込む上でも有利だとされています。
「隙間」を狙う日本の不動産各社の動き
日本でもマンションの一室を貸し出す民泊が全国的に普及していますが、同時に基準を満たさない「違法民泊」が社会問題化しています。治安面の懸念などで同じマンション住民からの苦情も相次いでいます。
2020年に向けたインバウンド(訪日外国人旅行客)の宿泊需要を取り込む上で不動産各社はホテル事業に積極的に乗り出していますが、「ホテル」と「民泊」の隙間市場を狙う動きも徐々に広がっています。例えば、大和ハウス工業はホテル運営などで培ったノウハウを活かし、2020年までに訪日外国人旅行客を主なターゲットにしたホテル仕様の賃貸マンションを全国で3千戸整備すると発表しました。
同社では旅館業の許可を得られる施設を建設し、長期滞在のニーズにも対応できる訪日客向けの宿泊施設を整備する予定です。自社で土地を購入してホテル仕様の賃貸マンションを建設するほか、土地のオーナーからアパートの建設を請負、運営を受託することも想定しているという事です。近畿地方と首都圏を中心に投資額は最大300億円規模を見込んでおり、金沢市など観光地でも展開を予定しています。ホテルよりもサービスを絞り込み、手ごろな価格で短期から長期滞在まで様々なニーズに対応できます。
また、ライオンズマンションなどで知られる不動産大手の大京は、昨年から民泊事業に参入しています。グループの大京穴吹不動産を通じて沖縄県のホテル大手と連携し、管理物件の空室を長期滞在者向け施設として展開するサービスを既に始めています。宿泊利用者は1カ月以上の「定期借家賃貸借契約」を結んで施設を利用する仕組みです。現在は日本人の長期出張者による利用が多いようですが、今後訪日客の利用拡大も期待しています。
民泊プラットフォーム事業も拡大
ウェブサイト上でプラットフォームを提供するサービスも日々拡大しています。不動産情報サイト運営のLIFULLは楽天との共同出資会社(楽天LIFULL STAY株式会社)を通じ、民泊が可能な物件を紹介するウェブサイトを立ち上げる予定です。
近年の日本での違法民泊問題は、「ホテル」と「民泊」の隙間という新たな市場を生み出しました。ここに目をつけ、独自のノウハウで宿泊施設を用意する不動産各社と、プラットフォームを提供する事業者が2018年6月以降に予定される住宅宿泊事業法(民泊法)の施行に合わせてどのような市場を形成していくのかが今後注目されています。
記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)