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2017.05.17
2017年5月12日のThe Wall Street Journalによると、アメリカの住宅マーケットでこれまで目立った動きを見せていなかったミレニアル世代(1981年~1998年生まれ)が、やっと住宅の購入に動き出しているという事です。
ミレニアル世代とは?
ミレニアル世代とはデジタル機器やインターネットが普及した環境に生まれ育った、いわゆるデジタル・ネイティブの最初の世代と言われます。
アメリカの大学生は多くが奨学金などの借金を背負って卒業します。これに加えミレニアル世代は大学を卒業して働く前後にリーマンショックの洗礼を受けているため、奨学金の返済と景気の低迷の影響を受けて結婚は遅くなり、マイホームやマイカーなども所有しないライフスタイルが特徴のひとつです。
初回購入者市場は賃貸市場の2倍
ですが最近この世代が、一斉に住宅購入をはじめたという事です。この動きはすでに堅調な成長を続けるアメリカの住宅市場を一段と後押ししそうです。
全米不動産協会(NAR)によると、住宅購入者全体に占める初回購入者(first time buyers)の割合は数年前30年来の低水準となる32%まで下がっていましたが、昨年は35%まで回復しました。初回購入者には多くのミレニアル世代が含まれています。
ミレニアル世代が「実家からやっと巣立ち、自分で家庭を築き始め、今ついに家を探しはじめた」と語る不動産関係者もいます。米国勢調査局によると、今年1月から3月には85万4000世帯が初めて家を購入しました。同じ時期に初めて物件を借りたのは36万5000世帯と、購入は賃貸の倍以上です。
コストが上昇している米住宅市場
これを受け、住宅メーカーも初回購入者向けの低価格な物件に注力をはじめています。一方アメリカでは建築にかかる材木価格と人件費が徐々に高騰しています。4月、トランプ政権がカナダから輸入する針葉樹の材木に20%の関税をかける計画を発表しました。長年続く貿易論争が再燃し、建築用の材木価格は約10年ぶり高値となりました。不法移民が支えていた建築労働市場も新政権の下で人手不足に陥っています。
やっと重い腰を上げはじめて住宅を買い始めたミレニアル世代を、コスト上昇の圧力がかかる米住宅市場がどう取り込んでいくのか、今後が注目されます。
記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)