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ステイジアキャピタルホールディングス株式会社
CEO 奥村尚樹
2016.11.10
アメリカ第一主義をスローガンにするトランプ大統領の政策がどうアメリカ不動産マーケットに影響をあたえるか、また我々日本人投資家にとって、国際分散投資を考える際に、アメリカの不動産をどう捉えるか、現時点での個人的な見解を述べたい。
過激な発言を繰り返して、マスコミを煽り、国内の格差や経済的弱者の不満を煽り立てて当選したトランプ氏が、実際どれだけ、公約なり発言内容を実現できるかその政治手腕が全く読めないので、今の段階で、アメリカ経済にどのような影響が出て、アメリカ国内不動産マーケットにどのようなインパクトを与えるかという問いに明確に予想することは困難であるが、敢えて今の段階で言うならば、アメリカ国内の経済状況及び不動産マーケットには、短期的には大きな影響はないと見る。
国際金融市場にはトランプショックが、各国の市場にサプライズを与え、世界経済を牽引するアメリカ経済が保護主義に向かうことによる世界経済への不透明感からリスクオフ相場が続くものと予想されるが、失業率も5%を切り、完全雇用を実現していることから、利上げがこの12月にも予定されており、国内の経済のファンダメンタルズは堅調で、むしろ(どこまで実現性が高いかどうか不透明では有るが、)同氏が掲げた減税策を進めることや格差是正のための中間層の所得向上を目指す施策を採用するとすれば、国内消費者のマインドには期待感という好影響を与え、国内不動産にはプラスとも考えられる。
ただし、中長期的には移民を制限する方向性を示唆しており、人口増を支えている移民の増加率が減少にむかうとすれば、住宅市場には将来的にはマイナスという見方もできる。ただし、アメリカの活力は世界中からの多様な人種が集い、優秀な人材がIT、金融などの分野でベンチャービジネスを拡大してきたことから、極端な移民抑制政策は行わないのであればむしろ、違法移民を退去させることで、治安の改善につながるという論理が成り立てば、プラスともいえるかもしれない。
私事であるが、本日、17歳になる娘が学校(シンガポールのインターナショナルスクール)から帰宅して、アメリカ大統領選挙の結果を踏まえ、アメリカへの進学をやめようかなと言い出したのは正直驚いた。
もし、移民に対して極端な抑制政策を取るようになれば、世界中から集って来ていた海外留学生などが、イギリスやカナダ、オーストラリアなどの他の英語圏へのシフトが起き、長期的にはアメリカ経済の活力を削ぐことになり、内向き志向のアメリカには投資国としての魅力が減少することも考えられる。
そういう視点から見れば、海外投資家からみたアメリカ不動産投資の魅力が落ちるという見方もできなくはない。
一方、我々日本の投資家から見た時に、アメリカ第一主義は、グローバル経済を推進してきたアメリカの方針転換である。この方針の転換は少なからず、世界経済にはマイナスの影響を与え、日本においてもTPPを安倍政権の成長戦略の一翼を担うという役割を期待していただけに、日本経済には悪影響があると言わざるを得ない。また米軍基地維持費の日本の負担増は、財政難の日本には大きな影響を与えることは必至であり、トランプ大統領の誕生は、日本国内の経済活動にはマイナスの影響が大きいと判断しておくことが必要である。
外国為替相場も当面はリスクオフ相場が予想され、ドル安円高に推移するとは思うが、マーケットが落ち着けば、国内経済が堅調であることからリスクオン相場に戻り、やがて緩やかにドル高、円安に向かうと予想する。
そうした流れの中で、海外不動産を投資ポートフォリオの一つに考える投資家の視点で考えると、今後のリスクオフの金融相場において、1ドル100円を切る円高相場のうちに、米ドルを購入して、比較的堅調に予想されるアメリカ国内の投資市場としての不動産に投資をすることは、世界的にリスクが高まっている投資機会の中で、消去法的に考えて、むしろタイミング的には面白いと言う考え方もできると思う。
いずれにしても、当面はリスクオフ相場の中で、何が本当の安全、安定資産か見極める必要がありそうである。