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2017.09.07
中国の住宅金利が上昇
中国の住宅ローン金利がじわじわと上昇しています。中国銀行や中国農業銀行など複数の国有銀行が広州で住宅ローン金利の引き上げを実施しました。例えば引き上げ前は年利4.9%だった住宅ローン商品は、5.145%へと変更されました。中国の中央銀行の基準金利に1.05倍をかけた計算になります。今年のはじめ頃から各地方で住宅ローン金利は上昇トレンドにあり、2軒目以降の購入を希望する場合、住宅向けのローンは一軒目よりさらに高い金利を提示されることも一般的になっています。銀行の審査に通らない人も増えているという事です。
不動産バブルを懸念する中国当局
この金利上昇の原因は、今年上半期に市場金利が上昇し、銀行の資金調達コストが膨らんだことが響いていると言われています。また、不動産価格の高騰が引き起こすバブル現象をなんとかを抑えたい中国政府当局の意向も反映しています。2016年以降、中国政府は国民の住宅購入に対し、様々な制限を試みてきました。例えば、住宅希望者が住宅を購入する条件として、一定期間の税金や社会保険料の支払いを課しました。しかしこのような制限だけではあまり効果が無く、北京、上海など大都市では引き続き不動産の高騰が続いています。これを受け当局は、住宅ローン金利を上げ、住宅購入に関わるコストをダイレクトに上昇させる事により、これ以上の不動産価格の高騰を抑制しようとしています。この政策の影響が出たのか、7月の住宅価格の伸びは0.6%にとどまり、前月の6月より0.3ポイントダウンしました。
ローン金利政策の影響
大幅な住宅ローン金利の上昇は、中国の景気を下支えしてきた不動産業全体の失速を招きかねず、当局は難しいさじ加減を求められています。また、住宅ローンを通じて不動産価格を調整する政策は、現金で住宅を買える富裕層とローンなしでは買えない中間層の格差を広げてしまうという批判もあります。
北京、南京、鄭州、天津などをはじめ、中国政府は現在約15都市を「バブル懸念がある都市」として指定しています。数年前から不動産バブルの懸念がある中国ですが、一部の地方政府は土地の値崩れを恐れ、住宅用地の供給を絞っているという事です。金利政策に頼らず、住宅の供給そのものを増やし、市場原理によって不動産価格を調整すべきなのではないかという意見も根強くあります。
9月に発表される8月の住宅価格の伸び率が7月よりさらに下回った場合、中国成長株などにも影響がでてくるのではないかと言われています。今後中国政府が景気の減退を招かずに不動産バブル懸念を払拭できるかどうかが注目されています。
記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)