昨晩、サプライズなニュースがマーケットを駆け巡りました。
本日12月8日から、新規購入者に追加印紙税を物件価格に10%を課税するというものです。
早くも略称の好きなシンガポールでは、この税金をABSD( Additional Buyer’s Stamp Duty) と呼んで、今朝の新聞紙上トップを賑わせています。
シンガポール不動産は、私のブログでも何度も紹介していますが、リーマンショックからの立ち直りが早く、昨年はGDP成長率14.5%を上回り平均で20%を超える上昇を記録しました。政府はあまりにも急激な価格上昇を警戒し、今年始めに短期譲渡に関するStamp Dutyを1年以内16%、2年12%、3年8%、4年4%、5年以降は通常の3%といる短期重課を実行してきており、今年の春からマーケットは取引量も昨年比4割程度減少しており、価格もほぼフラットな状態が続いていたところであり、このタイミングでの発表は少なからずサプライズでした。
具体的には以下のような新規購入者に適用されます。
①外国人購入者には、通常の印紙税(SGD24,600)に加え、10%のABSDが課税 ($100万以上の物件の場合は、SGD124,600)
②PR(永住権保有者)の2件目の住宅に対し、通常の印紙税(SGD24,600)に加え、3%のABSDが課税($100万以上の物件の場合は、SGD54,600)
③シンガポール人の3件目の住宅に関しては、通常の印紙税(SGD24,600)に加え、3%のABSDが課税($100万以上の物件の場合は、SGD54,600)
要するに海外の富裕層や法人が購入する高級不動産を狙い撃ちにしています。
政府の要人のコメントによると、近年海外からのプレイベート住宅(HDBというシンガポール国民しか買えない公共住宅を除く高級物件をさす)投資が急増している。2009年の上半期は外国人シェアが7%であったのが、2011年の下半期には19%に上るとしている。
確かに昨今シンガポール不動産を購入する中国人が外国人の中で26%を占めるというデーターが出ており、ここ1−2年のチャイナマネーがシンガポールマーケットを押し上げているのは確実です。10月の第三週にもマレーシア、シンガポール不動産視察ツアーの日本からの不動産関係者のツアーをアテンドしましたが、その際URA(都市再開発局)のシンガポールの都市計画展示館に中国人の投資家のバスが我々のバスと並んでいました。当方のバスより大型で2階建てでしたので、日本の参加者は、ジャパンマネーはチャイナマネーに負けてるねと苦笑いしていいたのが印象的でした。
今後のマーケットは、確実に影響を受けるでしょう。早くもマーケット関係者は来年はシンガポール不動産は取引量、価格とも2割程度調整するとの見方がでてきました。
一方、高級物件をあつかうデベロッパーは、印紙税を負担したり、家具や金利負担プログラムなど購入者に魅力的なプロモーションをしてくることは間違いありません。
このタイミングで政府がこの政策を仕掛けたのは、やはり世界経済の不透明感の中、シンガポールに資金が流れ込んでおり、その金が不動産に流れ込むことを事前に防止することを狙った物でしょう。そもそも小さなマーケットであるシンガポールの高級不動産市場(全体の17%)に世界中からリスク回避マネーが入れば、物件価格の変動幅も大きくなることを恐れているのです。
香港は今年も昨年に続き全世界で価格上昇率トップとなりました。(英コンサルタントのナイトフランク発表)が、ある意味、香港との差別化を狙っているとも言えるかもしれません。
この政策の影響が今後のマネーの流れにどう影響を与えるか、注目です。
むしろこれからシンガポールは買いなのか、それとも当面シンガポールに向かっていた金は周辺国に向かうのか?
あるいは、短期的には住宅からオフィスに流れるのか?
しばらくシンガポールのマーケットは注目です。