22日付のマレーシア経済紙の報道として、シャリア法に適合した世 界最大規模の不動産投資信託(REIT)であるAxis Global Indutrial REITについて、マ レーシア証券取引所への上場が当初予定の6月初めから1カ月程度遅れ、同月末か7月初めになるとロイター通信が伝えました。REIT内に組み入れ予定の日本の不動産2物件が宮城県の岩沼市にあり、今回の東日本大震災で被害を受けたためです。 同REITを運用するAxis REIT Managersは、この不動産2件を対象資 産から外した上場目論見書をマレーシア証券委員会に改めて提出するようです。今回はずした不動産の評 価額は合計18億円(6540万リンギ)で、資産全体の31億7000万リンギに占める割合は小さいと説明しています。Axis Global Indutrial REITは、日本、オーストラリア、香港のロジスティック系(物流倉庫)不動産を主な資産で構成されています。
イスラム金融として世界のマーケットをリードしているマレーシアで、最大級のイスラム法適用のグローバルREITであることから、非常に注目されていましたが、今回の震災の影響がこんなところにも出ています。今まで海外からの投資家の日本不動産への取り組みは東京を中心とした首都圏が中心で、耐震を中心とした建物構造上のDD(デユーデリジェンス)が行われて来ましたが、物流系不動産が立地する港湾付近での津波リスクについては正直、あまり議論されてこなかったのかもしれません。今後日本の不動産をグローバルな投資ファンド、REITが組み入れる場合のリスク要因に加わることは間違いないでしょう。
一方、香港上場の人民元REITも話題を呼んでいます。
この4月29日は香港で、中国北京の東方広場(香港最大財閥長江実業集団、トップはご存知李嘉誠)を組み入れた匯賢REITが上場(調達総額約125億人民元)します。北京の一等地王府井にある高級複合商業施設(大規模ショッピングセンター、高級オフィス、グランドハイアットホテルなど80万㎡)であり、資産としての有望性のほか人民元建てのREITとして話題を呼んでいますが、アセットが単一(分散が効いていない)であることや、価格が意外に高いという評価も有り、当初の評判ほどIPOの募集倍率は上がっていないとも聞きます。
これは、中国のアセットなので厳密にはグローバルREITとはいえませんが、人民元の国際化の流れに中で、為替管理が行っている国の資産を裏付けとしてクロスボーダーで資金を調達する流れとしては興味深い仕組みです。中国政府としても人民元の国際化のテストとして、香港も人民元オフショアセンターとしての機能を試す意味でも非常に注目されています。