昨日、視察報告書(1)をアップした所、イギリスから鹿島建設の英国法人がロンドン市内でオフィスと商業の複合ビルの開発許可を取得したとの報道が有りました。金融街シティーにもほど近いColman Streetに81,924sqfの比較的小振りなビルですが、2019年完成予定で、デザインにこだわったテナントをターゲットにするコンセプトのようです。たまたま英国離脱後に許認可取得の報道が出ていますが、日本を含め海外からの投資は依然活発のようです。
さて、前回のマーケット視察報告(1)に続きます。
Sheffieldへの大型開発投資に象徴されるように、今後ロンドンからNorthern Power Houseなどの地方に投資がシフトしていく可能性が高いと見る。特に中国資本は、近年米国への牽制から英国との経済的、政治的な関係を重視してきたことから、EU離脱決定により、この機会をむしろチャンスと捉え、EU離脱後の英国に、積極的に経済的支援(言ってみればチャイナマネー投資)を通じて政治的な影響力を高めることは間違いない。英国内でも中国資本への歓迎する報道と、警戒する報道が交錯している。
当社は昨年からSheffieldの学生向けマンションの区分ユニット投資を日本の個人投資家に販売コンサルしていたが、今回このマンションが8月にも竣工引き渡しが予定されているため、デベロッパーの社長とも面会したが、すでにBrexitの決定がなされてから、中国や東南アジアからの本物件の問い合わせが急増しており、この1週間で、完成前のユニットが、1年前の販売時の30%増しの価格で7戸転売が成立したと事である。つまり、英国離脱決定後に海外からの投資家の関心を呼んでいるのは、英国ポンド安が影響している。
つまり、1年前から見てポンドが30%下落していることから、外貨建てでは1年前の建築中の物件価格で、現在の竣工直前の物件を購入するのはリスク・リターンから考えて十分投資にあってくるということである。
学園都市において学生向けマンションは恒常的に不足している住宅マーケットにおいて、中国人を始めとする富裕層の子弟留学生の中で2012年ごろから居住住戸として人気を得ており、一方で外国人投資家から高利回りを期待できる投資対象としても注目されてきている。Select Propertyという新興デベロッパーはマンチェスターを中心に、リバプール、リーズ、ヨーク、シェフィールドなどの所謂Northern Power Houseの主要都市にVITAというブランドで学生向けコンドを開発・販売・運営を手がけており、この分野でのマーケットリーダーと言われている。すでに管理戸数は2000戸を超えており、現在開発中のヨーク、エジンバラ、ニューカッスル、マンチェスターの新規案件を合わせると優に3000戸は超える。これを主に、海外(中国、香港、シンガポール、ドバイ)の個人投資家に平均20㎡のワンルームを1戸あたり8万ポンドから10万ポンドで3年間7%のネット利回り保証で販売をしている。
各ユニット内
また最近では、マンチェスターの中心地に位置し、マンチェスター大学に通じるメインストリートであるOxford Roadsの好立地に大規模なCircle Squareというプロジェクトを進めている。これは個別の分譲を行わず、英国内の機関投資家に開発段階から投資利回り商品としてバルクで販売している。同社によると、管理中の2000戸のユニットは、完成後1年以内にほぼ100%稼働となるようで、共用施設の充実度、コンパクトながら機能的なユニット、行き届いたサービスで、海外からの留学生からに絶大なるブランドを確立したと自信を深めている。同社以外にも学生向けアコモデーションは、各学園都市でここ数年急速に建設供給されており、海外不動産投資家の急騰したロンドン不動産からのシフトの受け皿になっていると言える。
EU離脱が国民投票で決定されことは、この学生アコモデーション投資市場にはどう影響を与えるかという点であるが、当面英ポンド安というフォローウインドが吹き、留学生の学費負担、生活費負担が海外から見れば、低減されることから、テナント需要も高まり、投資の面では、販売、流通市場では好影響を与えるという見方が一般的だ。
Northern Power House の各都市では、英ポンド安という影響から、海外からの留学生比率が高まることによる学生アコモデーション市場に需要が高まるという見方と、海外からの投資マネーが、調整局面を迎えたロンドン市場からシフトしてくることが考えられ、安定した市場が形成されよう。
EU離脱が国民投票で決定された問題に関して、私が現地の声を聞いてみると、離脱結果発表の直後の混乱はすでに収束しており、メイ首相が就任し、新政権が発足したことにより、一定の落ち着きを取り戻した感はある。
離脱の交渉が、具体的にいつどのように始まり、どのように決着するかは、未だ不明であり、不透明感は続くとは言え、通常の経済活動は行われており、むしろポンド安によるインバウンド需要(海外からの旅行、出張、留学ビジ)が高まることからイギリスGDPに与える悪影響はさほどでもないという楽観論も出始めた。
イギリスのEUからの輸入は輸出を上回り貿易赤字であることから、EUにとっては、交易条件の悪化は避けたいところで、むしろ離脱交渉で難しい舵取りが予想されるのはEU側との見方もできてきた。何よりも増え続ける移民に対する社会保障費の急増や、英語や文化を理解しない移民たちの問題を解決するためには、このタイミングでEUから離脱する方が長期的には相対的には英国には優位に働くという声が、やはり英国内では支配的になりつつ有る。
むしろEU自体の弱体化及び崩壊に拍車がかかるという懸念とそれによる英国への悪影響や世界経済に与える悪影響を懸念し、ついにパンドラの箱を開けてしまった英国に対する世界からの英国非難の論調があるが、当地においてはロンドンの金融市場としての機能低下によるロンドン市民の将来不安はあるものの、歯止めがかからない移民問題の解決のほうが、優先課題となるという島国気質の大英帝国の世論が勝った結果なのだと理解した。
以上