アジアの富裕層(High Net Worth Individual)のライフスタイルに対応した物価インデックスがあります。
Julius Baer Lifestyle Index といい、スイスのプライベートバンクであるJulius Baerが、昨年8月に発表したもので、今年は2年目となるが、昨日公開されました。
アジアの富裕層のハブと言われる4都市(シンガポール、香港、上海、ムンバイ)での20アイテム(大学授業料、ビジネスクラスの航空運賃、4000sqfの高級住宅、ゴールドローレックスオイスター、シャネルのバッグ、ティファニーの2カラットのダイヤモンド、アルマーニのスーツ、メルセデス500SEL, 弁護士の1時間あたりの費用、Bording School の費用、トップクラスのゴルフ会員権価格、トップクラスの病院の入院費用などが含まれる)で、各都市別、昨年別で比較しています。
同社によると、昨年比で、4都市での平均値で、8.8%の上昇をしており、同エリアでの一般の消費者物価指数の上昇率6%を上回っており、都市別で言うとシンガポールの上昇率は、13.7%であり突出しています。(香港は10.8%、上海8.8%ムンバイは2.2%)
シンガポールドルは、今年に入り、米ドルに対して5%以上も上昇している割に、香港(香港ドルは米ドルにペッグしている)よりも高級物価上昇率は高いのはどうも品目の中で不動産のスコアの上昇が効いているようです。ちなみに昨年比シンガポールにおいては、35%の上昇を記録してます。(特定の超高額物件を使っているので、平均ではない)
確かに、昨年12月にシンガポールでは、ABSD(購入者むけ追加印紙税)が導入されており、今年に入りマーケットは沈静化しているが、昨年の後半は高額物件が急騰していたのでこういう結果になったのかもしれません。
注目すべき点は、シンガポールと香港の富裕層向けの高額アイテムの価格比較です。
<香港がシンガポールより高い項目>
住宅(4000sqfのプライム物件) 香港USD 40Mil シンガポールUSD 13Mil
ウエディングバンケット 香港USD 121K シンガポールUSD 67K
ゴルフ会員権 香港USD386K シンガポールUSD240K
歯医者治療費(トップクラス) 香港USD3K シンガポールUSD1.8K
ワイン 香港USD4.3K シンガポールUSD3.3K
<シンガポールが香港より高い項目>
ハンドバッグ 香港USD4.9K シンガポールUSD5.8K
宝石(ティファニーの2カラットダイヤモンド)香港USD116K シンガポールUSD160K
Cigar 香港USD466 シンガポールUSD1,375
弁護士費用(1時間) 香港USD386 シンガポールUSD 660
入院費用 香港USD464 シンガポールUSD756
女性用靴(クリスチャンルブタン)香港USD1005 シンガポールUSD2,714
車( メルセデス500 SEL) 香港USD230K シンガポールUSD402K
とかくシンガポールと香港はアジアの金融センターとして、お互いライバルとして比較されますが、富裕層にとってもどちらでライフスタイルをおくるかでコストが変わってきます。
上の比較から、やはり土地の価値が高い香港では、土地代やレント代にかかる品目では香港が高く、人件費が高いシンガポールで、サービス関連が高いようです。また、高級ブランドはフリーポートとして歴史が長い香港が安く、車は政策的に抑制しているシンガポールが異様に高いという結果であり、両都市で生活をしてみた私の実感値と一致しています。
HNWIと言われる人々にとって、ライフスタイルを維持することは大変です。年率14%の物価高に負けない運用を行わないと資産が目減りしてしまうのです。
それにしても、世界第2位の富裕層を抱える日本(東京)が、アジアのこのインデックスの調査対象に入らないというのは時代なのでしょうか?
かつて世界のブランド品を買いまくった日本人は、今は高額ブランド品をもとめる生き方はかっこ悪いという風潮があるようです。確かにもともと日本の富裕層は、このような見かけだけのライフスタイルをおくっていないような気がしますし、スイスのプライベートバンクの見立ても外れていないのかもしれません。
景気の良い新興国での贅沢物価指数のお話でした。
Julius Baer Lifestyle Indexの昨年との比較